一、事業の目的・意義を明確にする

十二ケ条の冒頭にあるのは、「事業の目的・意義を明確にする(公明正大で大義名分のある、高い目的を立てる)」です。
京セラの場合には、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類。社会の進歩発展に貢献すること」という単純明快なものになっています。トップである私も含めて、末端の従業員に至るまで、京セラという会社に集うすべての従業員を物質的にも精神的にも幸せにしていきたいがために、私は京セラという会社を経営するのです。他に目的はありません。会社の目的として、「この会社に勤めてよかった。給料もヨソの会社より少し高いし、将来も安定していて安心して働ける」と思える会社にしてあげたいと思うから、私は経営をしているのですということを経営の根幹に置きましたが、ぜひ皆さんもそのような会社の目的・意義を明確に打ち立ててください。

先ほどは低次元の自我に満ちたものと言いましたが、会社の目的とは、決して経営者の私利私欲に満ちたものではありません。それをはっきりと従業員に伝える必要があります。
「私は金儲けなどの自分自身の利己的な思いで、従業員を使って会社を経営しているのではありません。もちろん、私も幸せになりたいし、豊かになりたい。皆さんもそうでしよう。だから、一緒にこの会社を立派なものにしていき、お互いに物心両面で幸せになりましょう。そのために会社を経営するのです。だから、皆さんにも協力していただきたい。皆さん自身のためにも一生懸命に頑張ってください」
そういうことをハッキリ言うのです。

 

このような一緒に生活を守っていくのだという単純明快な大義名分でもかまいませんが、第二電電をつくりましたときは、これとは少し異なるものでした。
そもそも私自身が第二電電を始めた動機は次のようなものでした。「電気通信事業は電電公社が独占していた。そのため通信料金が高く、国民が困っている。競争がないから、そうなったのだ。競争のない社会、独占された社会は決して消費者のためにならない。自由な競争を導入し、通信料金を引き下げていきたい。国民のために電電公社の独占体制に風穴をあけ、通信料金の低下を通じて、一般国民が喜んでくれるようにしたい」